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「ほんとうの私?」

先日、昼下がりの公園でベンチに

腰を下ろしていると、

ふと足元で小さな動きがありました。

目をやると、いつの間にか

5、6羽のスズメが集まっていたのです。


スズメたちは、私の足先のすぐ近くで

木の実をついばんでいました。


驚くほどの近さ。


手を伸ばせば届く距離にいるというのに、

まったく動じる様子がありません。

私の存在など気にも留めない様子で、

すぐ足元までやって来てはくちばしでつつき、

またひょいと跳ねて

次の木の実へと向かっていきます。

 

そういえば、

都市部の鳥は人に慣れているものでした。

故郷の田舎で見かけた鳥たちは、

人の気配を感じると

すぐに飛び立ってしまっていたものです。

こちらが少しでも動こうものなら、

枝から枝へ、

あるいは空へと去っていってしまう。


小さい頃、

名も知らない小鳥をカーテンの隙間から

こっそり眺めていた記憶を思い出しながら、

スズメの姿をぼんやりと見つめていました。


……それにしても、

東京のスズメのこの距離感。

人間のすぐそばで平然と餌を探し、

ぴょんぴょんと歩き回るその姿は、

まるで警戒心を

どこかに置き忘れてしまったかのようです。

 

この違いは、どこから生まれるのでしょうか。

環境の違い、経験からくる知恵、

あるいは

単なる慣れにすぎないのかもしれません。

しかし、どちらが本来の姿なのかと問うことに、

きっと大きな意味はないのでしょう。

どちらも、その土地に

根ざして生きる命の姿なのです。

 

それは、

私たち自身にも当てはまることだと思います。

人間もまた、知らず知らずのうちに、

周囲の環境に合わせて

心の持ちようや振る舞いを

変えているものです。


でも、

「こちらが〝ほんとうの私〟で、

あちらが〝ニセモノの私〟」

ということではなく、

どれもが紛れもない真実の姿なのです。

そのことに気づいたとき、

私たちの世界の見え方も、

静かに変わっていくように思います。


いまここの自分を否定して

〝ほんとうの私〟を追い求めることで、

そのギャップに苦しんでしまう

――そんなこともあるのではないでしょうか。


家族の前では饒舌だけれど、

人前では寡黙になる。


家ではリラックスしているけれど、

職場ではキャラクターを作っている。


心静かにいられる日もあれば、

落ち着かない日もある。


どの姿も、その日その時の自分との出会いです。


どうぞ今日から、

いまここの自分を、

少しやさしく見つめてあげてください。


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