「雲の上には、いつも青空がある」

まだ冬の名残を感じる早朝、

私は羽田空港に向かっていました。

これから、

久しぶりの旅行に出かけるところです。

しかし、東京の天気は激しい雨でした。

空港に向かうのを少し億劫に感じながら、

なんとか到着しました。

待ちに待った旅行のはずなのに、

どんよりとした空模様のせいか

気分はいまひとつ上がりません。

「どうせなら晴れていてくれたらなぁ」

そんなことを思いながら

私は飛行機に乗り込みました。

雨の滴る窓の外には

うっすらと遠くに見えるビル群。

滑走路に光る誘導灯。

飛行機はそれらを横目に

ぐんぐんと加速していきます。

離陸すると、

眼下の薄暗い街並みはどんどん小さくなり、

機体は雲の中へと入りました。

窓の外は一面灰色の世界。

やや不安な揺れも感じますが

飛行機はさらに上昇を続けていきます。

そして突然――。

見渡す限りの青空が広がります。

さっきまでのどんよりとした空が

うそのようです。

雲の上に出ると

果てしなく続く雲海と

真っ青な空がありました。

「そうか、雲の上はいつでも晴れているんだ」

私はハッとさせられました。

私たちの心にも、雲がかかる日があります。

大きな失敗をしてしまった日。

誰かを傷つけてしまった日。

そんな日は、自分を責めてしまい、

まるで心の空が曇ってしまったかのように

感じるものです。

でも本当は、どんなに分厚い雲の上にも

変わらず青空がひろがっています。

分かっていたとしても

それを見失ってしまうときがあります。

欲張りな心、怒り、思い込み——

それらが心の青空を覆ってしまうのです。

雨の日も、

うまくいかない日も、

自分を責めてしまう日も、どんな日も

きっと青空はあるはずです

だからこそ、自分を責めずにほんの少しだけ

優しくなってみる。許してみる。

「いまの私はそれでいい」と受け止めてみる。

すると、ゆっくりと

光が差し込んでくるかもしれません。

天野