お腹がいっぱいだとしたら?
- Shojin-Project
- 2022年6月3日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年6月23日
「お腹いっぱい!!」誰もがこの気持ちを経験したことがあるのではないでしょうか?食いしん坊の私はもちろん経験したことがあります。今回ご紹介する禅語は「美食不中飽人喫」です。これは中国の長慶慧稜(ちょうけいえりょう)禅師が説かれた言葉で、「美食も飽人(ほうじん)の喫(きっ)するにはあたらず」と読みます。意味は「どんなに美味しい料理であっても満腹の人には必要ない」という意味です。誰もが一度は経験したことがあるかと思いますが、空腹の時に街を歩いていると、食べ物の香りが食欲を刺激して「あーお腹すいた。なんでもいいから食べたい!」という気持ちになります。しかし、満腹の時に食べ物の香りがただよってきてもあまり魅力的には感じませんよね?

この禅語は「相手の気持ちが乗らないうちは、相手にとってどれほど良いことであっても受け入れることは難しい」と説いているのです。
例えば仕事のことで悩んでいる同僚がいるとします。あなたがその人に適したアドバイスをするとしたら、おそらく御自身の経験を踏まえてアドバイスをするのではないでしょうか?「私の時はこうだったからこの人にも通用する、私の時はこれで解決したから大丈夫!」と。しかし、果たしてそのアドバイスは悩んでいる同僚に届くのでしょうか。もちろん届く場合もあるでしょうが、あるいは「別に聞いてもいないのに、うるさいなぁ」と思う人もいるかもしれません。せっかくアドバイスをしたのにその通りにしない同僚を見て、あなたは「せっかくこんなにいいアドバイスをしたのに!この人は頑固だ!」と考えてしまうと思います。しかし、少し角度を変えてこう考えてみてはいかがでしょうか。「ああ、今この人は少し気持ちが乗らない状態にあるんだな、自分の意見は押し付けず、どうしたいかを聞いてみよう」
アドバイスは優しさから来るものですが、相手の状態によってはお節介にもなってしまいます。この禅語は、相手は今どんな状態にあるのかよく見極めて行動してくださいと説いているのです。相手に寄り添い相手を想うことは、今の世の中で大切なことではないかと思います。
出典:『碧巖録』
福島和哉
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