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みかんに教えられた

先日、冷蔵庫の中を

掃除していたときのことです。

奥のほうから、ずいぶん前に買ったまま

忘れていたみかんが出てきました。

買った当初は、張りのある

きれいな実をしていたのに、

すっかりぶよぶよになり、

皮の表面も黒ずみ、

手に取るのもためらうような状態でした。

もはや食べられようもなく、

ため息まじりに処分することに......

 

思い返せば、みかんを買った日は、

「今日はみかんが食べたい」

と思ってスーパーで買ったはずでした。

しかし、家に帰るとみかんを買ったことに

満足してしまい、その日のうちに

食べることはありませんでした。

冷蔵庫を開けるたび、

目には入っていたのに、

「また今度食べよう」とか

「今日は気分じゃない」と思いながら、

結局、ずっと後回しにしていたのです。


みかんを処分しながら、

「ああ、もっと早く食べれば良かったな」

と思った時、道元禅師が記した

『典座教訓』の中の一節

  「更に何れの時をか待たん」

という言葉が頭をよぎりました。


道元禅師が中国で修行していた時のことです。

とある暑い日に、一人の老僧が、頭に笠もかぶらず、

汗を流しながら、庭で一所懸命に海藻を干していました。

その様子を見た道元禅師が、

「こんなに暑いのに、なぜ今やるのですか」と尋ねると、

老僧はこう答えました。

「更に何れの時をか待たん」

(今を逃して、いつやるというのか。)

この言葉は、暑い日も惜しまず修行に

励む老僧の姿を通して、

今という時の大切さを説かれたお話です。


今この瞬間を逃せば、

もう同じ時は二度と戻ってきません。

みかんを無駄にしてしまったのは、

自分の心の緩みや「そのうちやればいい」

という気持ちのせいだったと気づきました。

 

考えてみれば、日々の生活の中には、

同じように「また今度」と後回しに

していることがたくさんあるのではないでしょうか。

私自身のことでいえば、冷蔵庫の掃除だけでなく、

机の片づけや読もうと思っている本、

誰かに伝えようと思っている気持ち、

どれも「いつかやろう」と、

そのままにしているものばかりです。

しかし、後回しにしていると

気づいたときには、あのみかんのように、

すでに手遅れになってしまうのかもしれません。


昔は手に入れるのが大変だった物も、

今では簡単に手に入る時代です。

だからこそ、

時間も物も「当たり前」と思わず

大切にしたいです。

傷んでしまったみかんに

そのようなことを

教えられた気がします。

康喜

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