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「幸せになりますように」

京都旅行記:


京都といえば、日本文化の色濃い街。

木造建築物や織物、そしてお寺。

京都の街の景色と香りが、日本文化好きな私の高揚感を煽(あお)りました。


目に映るお寺は、経年が威厳と風格に置き換わり、重々しい雰囲気が溢(あふ)れており、木造建築のお堂の美しさに感動しました。

建物の中心にいらっしゃるのは、時代の移り変わりを見守ってきた仏様。

目の前に立って見てみると、自分のちっぽけさになんだか少し後ろめたさを感じました。

日々正しく、善き心を持って行動できているのか問われているように感じます。



「これまでどれだけ多くの人が手を合わせてきたのだろうか。

ふらっと訪れた目の前にいる私のことを見てくださっているのだろうか」



仏様を純粋にお慕(した)いする感情と不純で懐疑的な気持ちが混ざり合ったまま、静かに手を合わせました。


これまで幾通りの教えで私を導いてくださった仏様を疑うのは良くない。

ましてや、僧侶を名乗る者が。

と、頭では分かっていても自然と心に湧いてきてしまった。



「一端(いっぱし)の僧侶になるにはまだ程遠いな」と思い、仏様を見上げました。


笑っているでも悲しんでいるでもない、かといって無表情でもない、読めない顔。

私を見つめて透かしているようでした。



「何百年も数多(あまた)の人を見守ってきたのなら

こんな私の考えも全てお見通しか(笑)」



なんだか離散的に思いを飛ばす心が馬鹿馬鹿しく思えました。


ならシンプルに手を合わせよう。



「いつもありがとうございます。幸せになりますように」




〜次の日〜


あるお寺の綺麗で立派なお庭に可愛く微笑(ほほえ)むお地蔵さんがいると噂を聞いて、真相を確かめに行ってみることにしました。


最寄りのバス停からやや歩くと、住宅街にひっそりと佇(たたず)む噂のお寺が見えました。

慎重に門をくぐり、まわりを観ながらゆっくりとお寺の中に入りました。

和室に着くと庭の木々が手招きに連れられ、縁側にゆっくりと腰を下ろしました。

時間を藺草(いぐさ)の匂いと葉が揺れる音に任せます。



カップルの楽しそうな会話でふと我に帰り、そろそろお地蔵さんを探しに行くかと足に力を入れました。

外用のスリッパに履き替えて探索開始。


鹿威(ししおど)しが響く中、綺麗に手入れされたお庭を進んでいくと、

ターゲットのお地蔵さんを発見!




「すごくかわいい」

・家族みたいに寄り添って手を合わせていてかわいい。

・瑞々(みずみず)しい大きな苔のカーペットの上でちょこんと手を合わせていてかわいい。

・空を見上げながら顔全部を緩めていてかわいい。

・総じて、母性を駆り立てられるようでかわいい。


今思えばそんなことを感じていました。




しかし、


かわいいお地蔵さんを見た時は思考せず


そのままのまっさらな気持ちで、お地蔵さんを真似てみました。


一緒に手を合わせて・・・・・






「幸せになれますように」






ん?




心に浮かびました。



立派な建物の中にいる大きくて装飾品豊かな仏様に。

お庭にいる小さくて可愛らしい笑顔をしている仏様に。



「幸せになりますように」と「幸せになれますように」という言葉。



でも、心のどこかから生まれる同じ意味ではないという違和感。

その違和感をどう言葉で表現しようか。




う〜ん、思い浮かばない。



「なりますように」と「なれますように」1文字違う。


でも、どちらも「幸せ」を求めている。


私にとって「幸せ」とは、安全と安定であり平穏である。


どちらもこの「幸せ」を指しているけどニュアンスが違う。


このニュアンスを言葉にしようとすると頭の言葉たちが逃げていく。


似ている感覚に陥る状況の例は思い浮かんでも、ニュアンスを具体的に表現する言葉が見当たらない。



言葉にしようとすればするほど、

どこがどう違ってどこがどう和らぐと感じるのか、

言葉が見つからない。



感覚を言葉にできない言葉の煩わしさ。




言葉を使って考え出すと底なし沼に嵌(はま)ったように抜け出せなくなる。


散々悩んだ挙句、辿り着いた言葉にできる明確なひとつの確信。



「現在(いま)を言葉にできなくとも、現在(いま)を感じて考えられる、現在(いま)を感謝しよう」

考え、感じることは多いけど、



まぁ一旦、感情や考えをそのままにして、


言葉に惑わされないよう


とりあえず手を合わせよう。





最後までお読みいただきありがとうございました!

「お幸せに、」


Shojin-Project 押見 大俊

合掌




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