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合掌は共通言語🙏

みなさんは海外から日本にやって来て、仏道修行をしている外国人がいることを知っていますか?普段見かけることが少ないので、英語などの外国語を話す僧侶というのはイメージしにくいでしょうか。今回の「禅僧小噺」では、私が外国人修行僧の姿から学んだことをお話しします。


 私は岡山県にある洞松寺(とうしょうじ)という修行道場で修行しました。曹洞宗では大本山である永平寺と總持寺が有名だと思いますが、そこで修行している外国人の割合はほんのわずか。一方、洞松寺は多くの外国人が日本人と共に修行に励んでいることで有名です。私がいた頃は、全体で30人ほどの修行僧のうち、約半分は外国人でした。


 私が数ある修行道場の中でも洞松寺で修行すると決めたのには、大きな理由があります。大学で教育学部の英語学科を専攻し、1年間海外留学をしていたことのある私は、大学卒業後も英語でコミュニケーションが取れる環境に身を置いて、語学力を保ちたかったのです。大学4年生の秋に父から洞松寺の存在と「洞松寺の修行中の公用語は英語らしい」という噂を教えてもらい、私は心を躍らせながら見学に行きました。洞松寺に着くと、すぐに何人かの外国人修行僧の姿が見えました。さらに日本語ではなく英語での会話が聞こえてきて、私はすぐに「ここで修行しよう!」と心に決めたのです。


アメリカ人修行僧の原浄さん
アメリカ人修行僧の原浄さん

私は大学を卒業し、意気揚々と洞松寺での修行をスタートさせました。みんなが英語で話している環境はとても嬉しかったのですが、難しい仏教用語や覚えなければならない作法がたくさんあって、最初は特に苦労しました。困ったときに誰に頼ればいいかも分からないし、どうしたらいいのかと戸惑ってしまったのです。そんな私を助けてくれたのは、外国人修行僧の原浄(げんじょう)さんでした。

 

 原浄さんはアメリカ出身で、当時は27歳。非常に真摯に全ての修行に取り組んでいて、日常の立ち振る舞いの一つ一つが丁寧で美しい方です。一方、修行道場に来てまだ間もない私の立ち振る舞いは、決して美しいと言えるものではありませんでした。食事の際、食器を使うときも静かにしなければならないのに音を立ててしまったり、坐禅をするときの作法も最初は慣れずに困惑したり。そんな私の様子を見て原浄さんは怒鳴りつけて注意するわけでもなく、「こうするんだよ」と英語で優しく教えてくれました。私が助けを求めたらいつだって、ときにはジェスチャーを交えて助けてくれたのです。原浄さんの他にも海外から来られた修行僧の方々は、みんな優しさと笑顔を持って接してくださいました。


洞松寺山門前にて、原浄さん(左)と筆者(右)
洞松寺山門前にて、原浄さん(左)と筆者(右)

私が段々と洞松寺での修行生活に慣れてきたある日、私は原浄さんと廊下ですれ違いました。修行道場では基本的に、誰かとすれ違う際にお互いに合掌して頭を下げます。しかし、悪い意味で慣れが出てきていた私は「今回くらいはいいかな」と思い、向こう側から歩いてきた原浄さんに合掌せずに通り過ぎようとしたのです。すると原浄さんは私の名前を呼び、


“That's NOT what you’re supposed to be. We cannot practice together without Gassho, right?”

(それはあなたがあるべき姿じゃないよ。合掌があるから一緒に修行できるんじゃないか)


と、いつものように優しく話してくれました。


 このとき、私はとても恥ずかしい気持ちになったのを覚えています。合掌は「慣れたからしなくてもいい」ものではなく仏道修行の基本であり、話す言語や国籍も違う私たちの心をつないでくれるものだと感じたのです。


「合掌は国境を越えた共通言語」


 すれ違う際だけではなく坐禅や食事、そして法要のときも手を合わせて合掌する。そうすることで仏様の心はどこまでも伝わっていくのだと思います。それを疎かにしてはダメだということを、海を越えてやって来た原浄さんに気付かされたのでした。


Shojin-Project 吉長洸大

合掌

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